榊英雄監督『木屋町DARUMA』は居心地が悪くて観て損のない映画
榊英雄監督の新作『木屋町DARUMA』の試写会に行ってきました。
主演は遠藤憲一。
この日の舞台挨拶には、榊監督に加え、出演の三浦誠己さん、武田梨奈さん、木下ほうかさんが登壇。司会は同じく出演の森本のぶさん。
実は司会をしていた森本さんは、以前ボクの撮った映画にもご出演いただいています。
まァそんなことは今回置いとくとして、ちょっとだけ薄ーくご縁があるから、ということでもなく、試写会でタダで観させてもらったんだしせっかく拝見したんだから感想を書こうかと思います。
まずは、この作品、いったいどんな内容かというと…
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と、書こうとしたけど、自分にはうまく描けない…って、いったんは諦めかけた。
うーん、なんていうか、ボクの拙い文章ではこの映画で描写されている出来事っていうのが、描ききれないんですよ。
なので、何も説明しないから「百聞は一見に如かず」で実際に観て! とあっさりと言ってしまいたい。
けど、それだと、ここでわざわざ記事を書いてる意味もない。
とはいえ自分も「榊英雄監督作品」「主演がエンケン」「武田梨奈が出てる」という情報とタイトルのみで、先入観なしのほぼスニークプレビュー状態で試写会に臨んだので、これから見ようと思っててこのページにたどり着いたのなら、やっぱり「あーむしろ何も知らないままで観ればいーよ」と放り投げてやりたくもなるんですが。
もとい、以下、あくまでも簡単に試みてみます。
(ちょっとでもネタバレを嫌う方は、以下はすっ飛ばして予告を見てください。ホントはなーんにも知らないで映画観て衝撃を受けてね!!)
【あらすじ】
ある一件の責任をとった結果、四肢を失ったヤクザ・勝浦(遠藤憲一)と、その世話を組から任された坂本(三浦誠己)。
彼らはヤミ金の取立屋として焦げ付いた債権者に嫌がらせをして借金を回収する稼業を行っている。
で、その取立に行く先々の人間たち(寺島進、武田梨奈ら)とのやり取りを横軸にストーリーは進んでいくんだけれど、それを通して縦軸となる、勝浦が四肢を失った事件の真相が浮かび上がってくる。
障碍者に成りながらヤクザを続ける、というシチュエーションだけでも凄まじいと思うんだけど、
彼らが追い込みをかける債権者たちの末路がヒサンすぎる。
いちど網にかかったら、ヤクザって最後の最後、骨までしゃぶり尽くすんだなあ…それが怖いのなんの。
身につまされる。て言うより、見てて心臓がキリキリする。だって、たぶん死ぬしか逃げ道ないんだもの。
こんなのを見させられると、ぜったいに借金したくねぇ!! と思っちゃう。
丸野裕行氏の同名小説が原作。
木屋町DARUMA
電書だけのリリースなのかな?
もう少し知りたい方は公式サイトをどうぞ。
下が予告映像。まあ、劇場でも流れてる予告だから、これは”ネタバレ”ではないでしょう。
あいかわらず怖いエンケンさん(本編はホラー映画ではありません)
出演は上記の舞台挨拶の方々以外では、寺島進、木村祐一、烏丸せつこ、などなど、曲者揃いの面々。
烏丸せつこさんなんか、あまりにもイメージの違う役でクレジット見るまで気づきませんでした…
この日登壇もした木下ほうかさんがキャスティングディレクターも兼任してたとのこと。
監督の榊英雄というとボクの中ではアクション系の俳優さん、という印象が強いんだけど、割とコンスタントに作品を作っている監督さんでもあって、(実は興味はあったけど観るタイミングがなく)今回が榊作品初体験。
今回のを観て、重たい作品を作るんだなあ、と思いました。
なんというか、人間の深ーいドロドロした部分を掬い出して晒すような。この作品だけがそうなのか、榊作品すべてがこんな感じなのかはもっと観てみないとわかんないんですが。
「人は観たいと思う現実しか見ようとしない」という言葉があるけれど、この作品では「観たくもない、目を背けたい現実」を嫌ってほど見せつけられる。
正直、見てて心地良いものではない。
壇上で監督ご本人も言っていたけれど、ホントに「なんでこんなの撮ろうとしたの?」と思わざるを得ない。
だって、映画ってのは、たいがい気分がよくなったりスカッとしたりするために観る「娯楽」なんだよね。
でも、おそらくこの『木屋町DARUMA』って作品は、そんな観客へのサービスなんてコレッポッチも考えてくれてないんじゃないか、と思う。
うーん…だから、これも監督自らこんなことを発言してたけど「観たら『不快だ』と思うかもしれない」、ホントにそうなんだよ。
観賞後に榊監督に対して「なんでこんな誰も幸せに終わらない映画を客に見せるんだよ…」とか思ったもん。
映画がエイターテインメントならば、そのカタルシスに一切背を向けた作品。
おそらくボクがこの映画の内容について「書けない」と投げてしまったのも、そこにあるんだと思う。
観たら損をするか、というと、そんなことはない。
でも、観て楽しくはならないよ。たぶん。
一言で言うなら、そんな映画。
上映後には榊監督と三浦誠己さんが再登壇し、トークを展開。
撮影時の裏話など盛り沢山で披露しまくってくれました。
監督も「質問とかある? なければどんどん勝手に話しますよー」と、作品の内容とは裏腹にノリノリで進行。
三浦誠己さんの最初の撮影が「エンケンさんのケツを洗うシーンだった」とか「オムツのウンコはカレー」だとか、木屋町っていう京都の繁華街(正直東京モンには縁が薄くてイメージがピンと湧いてこないけど、怖い街らしい)での撮影がいかに困難極まりなかったか、等々、止め処無く溢れるオモシロ話で楽しませてもらいました。
その話の途中で出てきた、監督ご本人は適当につけたらしい、劇中出てくるペットの亀の名前の「ジョニー」。
スタッフから「ジョニーって、アレのことですよね!?」と言われて「???」だったそうだけど、
たぶん指摘されたのは『ジョニーは戦場へ行った』のことだと思う。
上映前の挨拶時にはこの日登壇できなかった遠藤憲一さんがビデオメッセージで登場。ハナクソほじりながらご挨拶というとってもフランクな映像も披露されて、なかなかに満足度の高い試写会でした。
ボク的なお薦めとしては、武田梨奈さんがすごい。文字通り体当たりの演技で画面に迫ってきます。
登壇時のお話では「監督に怒鳴られながら、かなり追い込まれた」とか。その辺りはさすがに俳優出身の監督さん、役者を演技に向け操るワザがうまいんだなあ。
『ハイキック・ガール』以来、武田梨奈さんはかなり注目して見続けてて、もともとアクションばかりでなく演技も上手い人だなあ、と思ってたんだけど、この『木屋町DARUMA』での演技がボクは今まで見た武田梨奈の中でいちばん迫真と凄みがありました。
ハイキック・ガール!豪華版(2枚組) [DVD]
女忍 KUNOICHI<通常版> [DVD]
ワカコ酒 DVD-BOX(4枚組/本編Disc3枚+特典Disc1枚)
榊監督、えらいです。観逃していた旧作もこれからチェックします!!
■『木屋町DARUMA』公式サイト
■『木屋町DARUMA』facebook
※2015年10月3日より渋谷シネパレスにて公開。以降順次劇場公開予定。
観賞は自己責任でネ。